真珠養殖
1893年(明治26年)に御木本幸吉によって半径真珠が作り出されてから、100年余りの歴史を持つアコヤ貝の真珠養殖は、中国の淡水真珠、南洋の黒蝶真珠、白蝶真珠と今や国際競争の場に立たされている。
真珠の養殖は、一般の水産養殖等と違い大きく育てれば終わるというのではなく、良質の真珠を作ることで完結する。その為には、いくつもの作業と熟練の技術、良質の母貝、漁場環境等が必要とされる。
母貝育成
人工採苗、天然採苗されたアコヤ貝の赤ちゃんを細かい目の網に入れて、真珠筏に吊って良質の母貝を育成させます。育成の段階で入れ物も大きい目の網篭等に入替え、水温、比重、プランクトンなど、漁場環境に気を配りながら大きくて健康的な母貝を育てます。
母貝仕立て
手間をかけて育てられた母貝は核入れの前に挿核手術に適した状態に仕上ます。
挿核手術というのは、体内にメスを入れて核を体内に入れるわけですから、アコヤ貝にとって大きな刺激が与えられることに成ります。その刺激によるショックをやわらげる為に、潮通しの悪い、窮屈な篭に入れてアコヤ貝の活動を抑制させます。
仕立ての出来具合によっては、真珠の品質が大きく作用され、養殖技術の重要な部分です。
核入れ作業(挿核手術)
いよいよ真珠の元となる、核をアコヤ貝の体内に入れます。(貝の大きさに合わせて核の大きさを決める。)
開口器で貝殻を開け、メスで切り生殖腺に核を入れて、別のアコヤ貝(細胞を取る為の貝)の外套膜を細かく切った細胞を核に付着させる。この細胞が溶けて真珠層をつくるので細胞貝選びも重要である。
養 生
核入れされた貝は、養生篭(細かい網目の平篭)に入れて波の穏やかな漁場で1週間から1ヶ月くらい静養させます。最近では、養生後、専用のレントゲンを使って脱核、核の位置ずれを見つけ出し、養殖作業の効率化を図っています。
沖出し・養成
核入れ、養生をすませ充分に回復した貝は、大きな目の篭に移し替え沖の漁場で水温、比重、赤潮等に細心の注意をしながら管理されます。
中でも特に大変なのは、夏場の貝掃除です。貝殻の表面に付着した、フジツボ、カサネカンザシ、ムラサキガイ、カキ、ホヤ等を付着物に応じて、出刃、グラインダー、ハンドクリーナー、高圧のジェット水流等で掃除をします。この作業を怠ると付着物との餌取り競合で大きくならなかったり、貝殻の開閉運動に支障をきたす等、色々障害が出ます。
避 寒
立神は、冬場の水温が10℃以下になるので(アコヤ貝は水温が10℃以下になると死んでしまいます。)、12月頃に水温が13℃前後の漁場へ貝を移動させます。移動方法は貝を入れ物ごと、船又は、トラックに載せて運びます。水温差が無くなった頃に元の漁場へ戻します。
浜揚げ
浜揚げは、12月から2月にかけて、一斉に行います。この頃に全国の真珠入札会が開催されます。この浜揚げで1年間の成果が出ます。貝、漁場、核入れ時期などいろいろな要素によって成績が左右されます。同じ作業をしていても年によって大きく違う場合もあります。近代化された現在でも真珠養殖は本当に難しいものです。
ここに記載したものは、大まかな作業の内容です。以上の作業の他にもいろいろと作業はつづきます。
個人によってもその作業の内容は違います。
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